「同期や先輩は普通に働いているのに、自分だけ何もできていない気がする」
新人薬剤師は、薬の知識だけを覚えればよいわけではありません。
調剤、監査、服薬指導、薬歴などの専門業務に加えて、電話対応、丁寧語、報告・連絡・相談、職場独自のルールまで同時に覚える必要があります。
接客アルバイトの経験がなければ、患者さんと話すこと自体に強い緊張を感じる場合もあるでしょう。
学生から社会人になっていくことで、一度にいくつもの負担が重なり、仕事をつらいと感じるのは不自然なことではありません。
ただし、つらさの原因が薬剤師の仕事そのものではなく、現在の店舗や教育体制にある可能性もあります。すぐに転職と決める前に、原因を分けて考えてみましょう。
- 新人薬剤師として働くことがつらい人
- 周囲と比べて「自分だけできない」と感じている人
- 今の職場で続けるか、異動・転職するか迷っている人
- 仕事のストレスが帰宅後まで続いている人
新人薬剤師が仕事をつらいと感じる主な理由
専門知識と実務を同時に身につける必要がある
国家試験に合格しても、現場の仕事を初日から一人でこなせるわけではありません。
新人のうちは、処方内容を確認しながら、調剤、監査、服薬指導、薬歴、疑義照会などを並行して覚えていきます。
薬剤師の仕事は患者さんの安全に関わるため、「間違えてはいけない」という緊張も大きくなりがちです。
特に監査を始める時期や、どこまで一人で判断してよいかは職場によって異なります。
心配な場合は必ず先輩に聞きましょう。一年目はむしろ聞く時間です。
監査への不安が強い人は、新人薬剤師の監査はいつから始まるのかを解説した記事も参考にしてください。
社会人としての振る舞いにも慣れなければならない
新人薬剤師が覚えるのは、薬のことだけではありません。
電話対応、敬語、報告のタイミング、患者さんへの声かけ、職場内での立ち回りなども必要です。
接客経験が少なければ、薬の説明以前に、
「何と声をかければよいのか分からない」
「電話を取るだけで緊張する」
ということもあります。
こうした負担は薬剤師の知識不足とは別のものです。経験を重ねることで、自然と少しずつ慣れていく部分でもあります。
職場独自のルールが多い
薬の配置、調剤や監査の手順、薬歴の書き方、在庫管理、疑義照会の進め方などは、職場によって異なります。
明文化されていない「この店舗では昔からこうしている」というルールもあるでしょう。
薬剤師として必要な知識があっても、独自ルールを知らないために仕事が進まないことがあります。
この場合、薬剤師に向いていないのではなく、単にその職場のやり方へ慣れていないだけかもしれません。
仕事にストレスを感じるのは自分だけではない
厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査」では、20~29歳の労働者の64.9%が、仕事や職業生活について強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄があると回答しています。
薬剤師限定の調査ではありませんが、20代で仕事の負担を感じる人は珍しくありません。
先輩や同期が平気そうに見えても、表に出していないだけかもしれません。
経験年数の長い先輩と新人の自分を比べて、「自分だけできない」と決めつける必要はありません。
先輩も最初から業務に慣れていたわけでは決してありません。慣れるという段階は仕事に限らずゲームやスポーツなどでも必要な過程ではあります。
仕事のつらさを4つに分けて考える
「すべてがつらい」と感じるときは、原因を分けると対処しやすくなります。
| つらさの種類 | 具体例 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 知識・経験不足 | 薬が分からない、投薬や監査が怖い | 頻出業務から覚える |
| 社会人・接客への不慣れ | 電話、敬語、患者対応が苦手 | 定型文をある程度作り、先輩の対応を見る |
| 職場環境 | 質問しにくい、独自ルールが多い | 上司への相談、業務調整、店舗異動 |
| 心身・勤務条件 | 残業、休憩不足、不眠、食欲低下 | 休養、専門家への相談、異動・転職 |
知識や経験不足が中心なら、時間とともに軽くなる可能性があります。
一方、質問できない環境や人間関係、長時間労働などが原因なら、新人本人の努力だけでは解決しにくいでしょう。
新人薬剤師が仕事をつらいと感じたときの対処法
一度にすべて覚えようとしない
新人のうちは、分からないことが多くて当然です。
すべてを一度に覚えるのではなく、その職場でよく出る薬や処方、毎日行う業務から優先しましょう。
「今日は2つ覚える」程度でも構いません。
質問や指摘を記録する
メモは、次の3つに分けると振り返りやすくなります。
- 後で質問すること
- 指摘を受けて修正したこと
- 今日できるようになったこと
できなかった内容だけでなく、できるようになったことも残してください。
速さより確認を優先する
先輩が速く仕事をしていると、自分も急がなければならないと感じるかもしれません。
しかし、新人のうちは速さよりも、必要な確認を省かないことが重要です。
まずは安全に進め、慣れてから少しずつ速度を上げていきましょう。
困っていることを具体的に相談する
「仕事がつらい」とだけ伝えても、相手は何を変えればよいか判断しにくいものです。
例えば、
一度に複数の指示を受けると整理できないため、優先順位を確認しながら進めたいです。
疑義照会と調剤・鑑査が重なると確認が抜けそうなので、慣れるまで少し業務を調整してほしいです。
と、困っている場面と希望する対応をセットで伝えます。
投薬件数を一時的に少し減らしてもらう、教育担当者を明確にするなど、職場側で調整できる場合もあります。
すぐに転職と決める前に店舗異動も考える
現在の店舗が合わないからといって、薬剤師の仕事や会社全体が合わないとは限りません。
同じ会社でも、店舗によって次のような違いがあります。
- 薬剤師の人数
- 処方箋枚数や応需科目
- 管理薬剤師の指導方針
- 質問のしやすさ
- 新人教育に使える時間
複数店舗を展開する会社なら、退職前に店舗異動を相談する方法もあります。
私が以前勤めていた某大手薬局チェーンでも、入社から3カ月以内に異動を希望し、認められた同期が複数人いました。
短期間で何人も異動していたため、「最初の配属や教育体制は大丈夫なのか」と感じる部分もありましたが、異動した同期はその後も同じ企業で働いています。
すべての会社で早期異動が認められるわけではありません。それでも、
- 今の店舗で何がつらいのか
- どのような環境なら続けられそうか
- 異動後も会社で働きたいか
を整理し、退職前に相談する価値はあります。
帰宅後も仕事のことを考え続けてしまうときは
仕事が終わっても、
「今日の投薬は大丈夫だったかな」
「先輩に注意された場面が頭から離れない」
「明日もミスをしたらどうしよう」
と考え続けてしまうことがあります。
反省点を振り返るのは大切ですが、休む時間まで仕事のことで埋まると、心身の疲れが抜けにくくなります。
まずは頭の中だけで考えず、次の3つに分けて書き出してみましょう。
- 実際に起きたこと
- そのとき感じたこと
- 次に確認・改善すること
「薬歴を修正された」という事実と、「自分は薬剤師に向いていない」という結論は別のものです。
一度の指摘やミスだけで、自分自身の価値まで否定する必要はありません。
反芻思考や「完璧にできるべき」と考えてしまうときの対処法は、薬剤師のメンタル不調と人間関係のストレスから心を守るセルフケアで詳しく紹介しています。
この記事では、Awarefyを使って出来事や感情を整理する方法も解説しています。
一人で整理しにくいときはAwarefyも選択肢
最近は、仕事の悩みを対話型生成AIへ相談する人も増えています。(chatGPTに相談する方もかなり多くなってきています)
一方、Awarefyが行った調査では、AIに心の支えを求める人の約6割が、AIへの依存を自覚しているという結果も報告されています。便利だからこそ、AIだけを唯一の相談先にしないことが大切です。
メンタルケアアプリのAwarefyは、、AIが利用者にとって唯一の頼り先にならないよう、公認心理師を中心にAIの振る舞いを調整しています。
幅広い質問へ答える一般的な生成AIとは異なり、
- 仕事で起きた出来事を書き出す
- 感情や考え方を振り返る
- 自分の思考の癖に気づく
- 必要に応じて人や専門的な支援も頼る
といった、自己理解やセルフケアを目的に使うアプリです。
「誰かに相談するほどではない気がするけれど、頭の中だけでは整理できない」というときの、複数ある選択肢の一つとして利用できます。
\ Awarefyで仕事後の気持ちを整理してみる /
※Awarefyは医療機関での診断や治療に代わるものではありません。プラン・料金・機能は変更される場合があるため、最新の内容はAwarefy公式サイトをご確認ください。
仕事以外へ意識を向ける時間も作る
休日まで仕事の勉強だけに使う必要はありません。
散歩、運動、映画、友人との時間など、薬剤師業務から意識を離す時間も大切です。
ブログやWeb制作、動画編集などに興味があるなら、すぐに副業や転職へつなげようとせず、少しだけ学んでみる方法もあります。
会社以外にも取り組めるものがあると分かるだけで、「今の職場でうまくいかなければ終わり」という感覚が弱くなることもあります。
薬剤師以外のスキルへ関心がある人は、薬剤師のリスキリングとWebスキルの身につけ方も参考にしてください。
ただし、眠れない、食事が取れない、出勤前に強い体調不良があるといった状態が続く場合は、アプリやセルフケアだけで抱え込まず、医療機関や職場の相談窓口などへ相談してください。
\ マンツーマンでのプログラミングやWebデザイン等の指導が受けられる /
新人でも我慢し続けなくてよい職場のサイン
次のような状態が続いている場合は、「新人だから仕方がない」で済ませず、異動や転職、休養を検討します。
- 質問すると怒られる、無視される
- 教わっていない業務を一人で任される
- 安全に確認できないほど急かされる
- ミスを人格の問題として責められる
- ハラスメントがある
- 相談しても教育体制が変わらない
- 睡眠や食事など日常生活に影響が出ている
「最低1年は続けるべき」「3年は我慢すべき」と、一律に決める必要はありません。
上司への相談や業務調整、店舗異動を試しても改善しないなら、外の職場を見てもよいでしょう。
経歴のために、心身を壊すまで耐える必要はありません。
まとめ|薬剤師に向いていないとすぐに決めなくてよい
新人薬剤師は、専門業務、社会人としての振る舞い、接客、職場独自のルールを同時に覚えなければなりません。
仕事がつらいと感じたら、まずは原因を分けて考えてみましょう。
知識や経験が足りないのであれば、頻出業務から一つずつ覚えることで変化する可能性があります。
現在の店舗や教育体制が原因なら、上司への相談、業務調整、店舗異動も選択肢です。
最初の職場でうまくいかないからといって、薬剤師そのものに向いていないとは限りません。
ただし、質問できない環境やハラスメント、日常生活に影響するほどの不調を我慢し続ける必要もありません。
周囲の先輩ではなく、少し前の自分と比べながら、抱え込まずに対処していきましょう。
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新人薬剤師の仕事のつらさに関するFAQ
- 新人薬剤師はいつ頃から仕事に慣れますか?
-
教育体制や業務内容によって異なるため、「何カ月で慣れる」とは一概にいえません。
以前より一人でできる業務が増えたか、質問内容が具体的になったかなど、自分の変化を確認しましょう。
- 接客経験がなくても大丈夫ですか?
-
最初は患者対応や電話に緊張しても、経験を重ねることである程度慣れていきます。
よく使う説明や電話の言い回しをメモし、分からない質問は確認してから回答しましょう。
- 帰宅後も毎日勉強すべきですか?
-
毎日長時間勉強する必要はありません。
その日に分からなかったことを短時間確認し、疲れている日は睡眠を優先してください。
- 仕事がつらくて転職を考えるのは甘えですか?
-
つらさの原因を確認せず、甘えと決めつける必要はありません。
私も辛くて週4勤務派遣薬剤師になり、空いた時間で副業スキルを身に付けました。業務への不慣れなら、経験や教育によって改善する可能性があります。一方、職場環境や勤務条件が原因なら、異動や転職によって状況が変わる場合もあります。

