現在病院薬剤師から転職をしようか迷っている皆さんせっかくならこれまで培ってきたものをできるだけ多く活かしたいですよね。
在宅医療に特化した薬局への転職は、キャリアの次の一手として非常に魅力的な選択肢です。
病院での入院患者への対応からシフトして、患者さんの自宅で向き合う在宅医療は、薬剤師としての専門性をさらに深め、より大きなやりがいを感じられるでしょう。
この記事では、病院薬剤師が在宅薬局へ転職する際のメリットや、知っておくべきことについて解説します。
病院薬剤師が在宅薬局へ転職すべき理由
病院薬剤師の経験は、在宅医療の現場で大きな武器になります。特に、在宅医療で必要とされる無菌調剤の経験がある方は、転職市場で非常に高く評価されます。
多くの在宅薬局では、在宅医療が未経験であっても、病院薬剤師の経験者を歓迎要件としているケースが多く見られます。
これは、先の混注技術だけでなく病院で培った多職種連携の経験や高度な薬学的知識が、在宅医療の現場で大いに役立つと評価されているからです。
中小薬局であればそれらの経験をしっかりとアピールすることで年収UPにもつながる確率が高いです。
ただ、全国各地の転職に対応できる転職サイトはかなり限られてきますので選び方には注意を。
【即戦力】病院薬剤師の無菌調剤スキルが在宅医療で活きる理由と評価
病院薬剤師のスキルは、在宅医療の現場でそのまま活かせます。特に、在宅医療で必要とされる以下のような特殊な注射剤の調製において、病院で培った経験は大きな強みとなります。
- 中心静脈栄養法用輸液(TPN)
- 抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)
- 麻薬 ※1
これらの薬剤は、患者さんの自宅で安全に使用できるよう、無菌的な環境で調製する必要があります。
無菌調剤は評価されるスキル
調剤薬局で無菌調剤を行った場合、調剤報酬として「無菌製剤処理料」が算定されます。厚生労働省が定める調剤報酬点数表によると、薬剤の種類や調製方法によって点数が異なります。
- 無菌製剤処理料1(抗がん剤):180点(閉鎖式接続器具を使用した場合)
- 無菌製剤処理料2(上記以外):40点
このように、無菌調剤のスキルは専門性としてかなり高く評価され、薬局経営における収益増加に繋がる可能性があります。
2. 病院では見えない「退院後の患者さんの日常」に寄り添う薬剤師
病院では見えなかった退院後の患者さんの日常的生活背景を知ることで、より個別的な服薬指導が可能になります。
患者さんの自宅を訪問し、生活環境や食事、家族のサポート状況を把握することで、薬の効果を最大限に引き出すための具体的なアドバイスができます。
例えば、飲み込みづらい方には普通錠⇒OD錠、一日三回の薬が難しければより半減期の長い同効種薬への変更による服用回数を少なくする提案など
3. 多職種連携への対応
在宅薬局では医師の往診に同行し、患者さんの日常から。病院で培った多職種とのコミュニケーション能力は、在宅医療の現場でも非常に重要です。
そもそもとして、薬剤師が医師の往診に同行をするのは、患者さんの適正な薬剤使用を管理するため
です。
往診医に薬剤師が同行するメリット:
・医師の処方意図を理解できる
・施設の入居時や退院後の持参薬の整理と往診医へのフィードバック
・服薬状況の確認で残薬や無駄な処方が減らせる
・薬剤の治療効果の判定と副作用発現についてのモニタリング
・医師や他の職種への効果的なフィードバック服薬アドヒアランスを高くするための工夫
出典:在宅医療における薬剤師さんの役割について|薬剤師求人・転職・派遣ならファルマスタッフ
同じ在宅業務未経験だとして、一般的な薬局勤務の薬剤師よりも病院薬剤師の方がスムーズにこれらにアプローチできると思います。
医師の処方意図を深く理解できる: 診察の場で医師がなぜその薬を選び、どのような効果を期待しているのかをリアルタイムで把握できます。
これにより、患者さんへの服薬指導がより具体的で的確になり、疑問点があればその場で医師に確認することも可能です。
持参薬の整理と往診医への的確なフィードバック:
特に施設入居時や退院後の患者さんの場合、複数の医療機関から処方された薬や、以前から服用している持参薬が多数あることが珍しくありません。
薬剤師が同行することで、これらの薬を正確に整理し、重複投薬や飲み合わせの問題をその場で確認。
医師へ迅速かつ効果的なフィードバックを行い、ポリファーマシー(多剤服用)の解消にも貢献できます。
薬剤の治療効果の判定と副作用発現についての詳細なモニタリング:
薬が患者さんの症状にどの程度効果を発揮しているか、また副作用が出ていないか、患者さんの表情や生活状況から総合的に判断できます。具体的な情報を医師に提供することで、より迅速かつ適切な処方変更や対応が可能になります。
医師や他の職種への効果的なフィードバックと服薬アドヒアランス向上への貢献 医師だけでなく、看護師、ケアマネジャー、栄養士といった多職種と密に連携し、患者さんの情報を共有できます。
これにより、チーム全体で患者さんの服薬アドヒアランスを高めるための具体的な工夫(例:服薬カレンダーの使用、飲みやすい剤形への変更提案など)を協議し、実行に移しやすくなります。
在宅薬局転職の不安を解消!病院薬剤師が知るべき課題と乗り越え方
病院から薬局、それも在宅薬局への転職を検討する際、いくつかの不安要素があるかもしれません。
例えば、
運転への不安
在宅医療の現場では、運転スキルがあった方がかなり有利です。中には運転業務が必須な求人も多いため、運転が苦手な場合は事前に確認が必要です。
しかし、慣れるまで先輩が同行してくれたり、運転不要なエリアを担当できたりする場合があります。
ただ、その場合は他スタッフに負担を強いてしまうことがあるので、在宅医療を行う際は基本的に運転スキルが必須という考えを持っておくことが大事だと思います。
知識・経験の不足
在宅医療はいまだ人手が足りないという職場が多く未経験でもみっちり業務を教えてもらえるようです。多くの薬局では座学や同行訪問といった研修制度が充実しています。
下手に一人で現場に行かせて曖昧な知識のまま業務を行ってしまうと危険ですし他の医療従事者の方々にも迷惑ですしね。
なので、病院での経験を活かしつつ、不足している在宅医療の知識を補うことができます。
転職活動の進め方
Xやインスタグラムなどの活用:ここ数年で急増しているのが、薬局オーナー自らが求人を出しているケースです。
メリットとしては、仲介業者(転職エージェント)を介さないことによりマージンを払わなくて済むため、経費削減、直接応募者に対してその分の金額を上乗せできるなどがあります。簡単に言うと年収UPです。
ただ、求職者自身が意識的に募集を探さないといけないため、手間がかかります。
在宅に強い転職エージェントの活用:専門知識を持つ担当者から、非公開求人や職場の雰囲気など、詳しい情報を得られます。
職場見学:実際に訪問同行をさせてもらい、業務の流れや職場の雰囲気を確認しましょう。
面接対策:病院での経験が在宅医療でどう活かせるかをまずは紙、もしくはchatGPTやGoogle Geminiなどを活用してまとめてみましょう。
より具体的にアピールすると採用担当者側も入社後のあなたの働きがイメージしやすいかと思います。
在宅医療の未来と薬剤師の役割
高齢化社会の進展に伴い、在宅医療の需要は今後ますます高まります。薬剤師は、処方薬の適正化に伴う医療費の削減、そして患者さんの生活の質(QOL)向上に不可欠な存在として、その役割はさらに重要になっていくでしょう。
付録
※1院外処方可能な注射薬(とても長いので通常時はここに閉じておきます)
インスリン製剤
ヒト成長ホルモン剤
遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤
乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤
遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤
乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤
遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤
活性化プロトロンビン複合体
乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体
性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤
性腺刺激ホルモン製剤
ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体
ソマトスタチンアナログ
顆粒球コロニー形成刺激因子製剤
自己連続携行式腹膜灌流用灌流液
在宅中心静脈栄養法用輸液
インターフェロンアルファ製剤
インターフェロンベータ製剤
ブプレノルフィン製剤
抗悪性腫瘍剤
グルカゴン製剤
グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト
ヒトソマトメジンC製剤
人工腎臓用透析液(在宅血液透析を行っている患者に対して使用する場合に限る。)
血液凝固阻止剤(在宅血液透析患者に対して使用する場合に限る。)
生理食塩水(在宅血液透析患者に対して使用する場合及び、本号に掲げる注射薬の溶解または希釈に用いる場合に限る。)
プロスタグランジンI₂製剤
モルヒネ塩酸塩製剤
エタネルセプト製剤
注射用水(本号に掲げる注射薬の溶解または希釈に用いる場合に限る。)
ペグビソマント製剤
スマトリプタン製剤
フェンタニルクエン酸塩製剤
複方オキシコドン製剤
ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム製剤
デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム製剤
デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム製剤
プロトンポンプ阻害剤
H₂遮断剤
カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム製剤
トラネキサム酸製剤
フルルビプロフェンアキセチル製剤
メトクロプラミド製剤
プロクロルペラジン製剤
ブチルスコポラミン臭化物製剤
グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤
アダリムマブ製剤
エリスロポエチン(在宅血液透析または在宅腹膜灌流を行っている患者のうち、腎性貧血状態にあるものに対して使用する場合に限る。)
ダルベポエチン(在宅血液透析または在宅腹膜灌流を行っている患者のうち、腎性貧血状態にあるものに対して使用する場合に限る。)
テリパラチド製剤
アドレナリン製剤
ヘパリンカルシウム製剤
オキシコドン塩酸塩製剤
アポモルヒネ塩酸塩製剤
セルトリズマブペゴル製剤
トシリズマブ製剤
メトレレプチン製剤
アバタセプト製剤
pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)製剤
電解質製剤
注射用抗菌薬
エダラボン製剤(筋萎縮性側索硬化症患者に対して使用する場合に限る。)
アスホターゼ アルファ製剤
グラチラマー酢酸塩製剤
脂肪乳剤
セクキヌマブ製剤
エボロクマブ製剤
ブロダルマブ製剤
アリロクマブ製剤
ベリムマブ製剤
イキセキズマブ製剤
ゴリムマブ製剤
エミシズマブ製剤
イカチバント製剤
サリルマブ製剤
デュピルマブ製剤
ヒドロモルフォン塩酸塩製剤
インスリン・グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト配合剤
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤
遺伝子組換えヒトvon Willebrand因子製剤
ブロスマブ製剤、アガルシダーゼ アルファ製剤
アガルシダーゼベータ製剤
アルグルコシダーゼ アルファ製剤
イデュルスルファーゼ製剤
イミグルセラーゼ製剤
エロスルファーゼ アルファ製剤
ガルスルファーゼ製剤
セベリパーゼ アルファ製剤
ベラグルセラーゼアルファ製剤
ラロニダーゼ製剤
メポリズマブ製剤
オマリズマブ製剤(季節性アレルギー性鼻炎の治療のために使用する場合を除く。)
テデュグルチド製剤
サトラリズマブ製剤
ビルトラルセン製剤
レムデシビル製剤
ガルカネズマブ製剤
オファツムマブ製剤
ボソリチド製剤
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