✔ なぜ、製薬会社で「早期退職」が続いているのか? その意外な理由
✔ 薬の値段が変わる仕組みが、キャリアにどう影響するのか
✔ 業界の波を乗りこなし、未来の自分を守るための3つのヒント
「安定」の神話はもう終わり? 製薬業界で今、何が起きているのか
製薬会社といえば安定、そう思っている人も少なくないのではないでしょうか?
確かに、少し前まではそうでした。
しかし、ここ数年、協和キリンやアステラス製薬といった大企業が、相次いで「早期退職」の募集をかけています。
これは、単に「業績が悪いから人を減らす」という話ではなく、
製薬業界の「安定」という土台が、少しずつ崩れ始めているのです。
早期退職が続くのは、国の「お財布事情」が原因だった?
なぜこんなことが起きているのでしょうか? それは、国が日本の医療費を少しでも抑えようと、
「薬の値段のルール」を大きく変えたからです。
理由1:毎年、薬の値段が見直されるようになった
以前は、薬の公定価格である「薬価」は、原則として2年に一度見直されていました。
しかし、2021年からは、その間の年にも「中間年改定」という形で、実質的に毎年、値段が見直されることになったんです。
これは、国の医療費を少しでも安くしようという狙いです。
しかし、製薬会社からすれば、毎年少しずつでも薬の値段が下がっていくので、会社に入ってくるお金(収益)がどんどん減ってしまいます。
理由2:薬局も、国の政策に対応している
もう一つ、忘れてはいけないのが「薬価差益」の存在です。
これは、薬局や病院が医薬品を卸会社から仕入れる際の価格(納入価)と、国が定めた薬価との差額から生まれる、いわば「利益」のようなもの。
薬局や病院の経営を支える大切な収益の一つでした。
国は、医療費を効率よく使うため、この薬価差益を縮小させる方針を進めています。
具体的には、市場での取引価格に合わせて薬価を毎年見直す(理由1)ことで、薬局や病院が薬から得られる利益を少なくしようとしているのです。
その結果、薬局や病院は経営を成り立たせる努力として、医薬品卸会社とより安価な納入価で取引するための交渉を行うようになります。
この動きが、結果的に製薬会社の収益にも影響を与えるという連鎖が生まれているのです。
理由3:AI時代に変わる「営業さん」の仕事
コロナ禍を経て、製薬会社の営業担当であるMR(医薬情報担当者)の仕事も大きく変わりました。
以前は病院やクリニックを足繁く訪問していましたが、今はオンライン面談やデータを使った情報提供が主流になりつつあります。
会社の「顔」として活躍してきたMRの働き方が根本から見直され、人数そのものの最適化が避けられなくなっているのです。
要は、人員削減です。
激変の時代を生き抜くための3つのキャリア戦略
このような変化の波は、薬業界で働く私を含む薬剤師にとって、決して他人事ではありません。
「安定」にしがみつくのではなく、「自分という商品価値」を高めることが、これからの時代を生き抜く鍵になります。
戦略1:「職種」ではなく「スキル」で自分を語る 👩💼
「MR」や「研究者」という肩書きだけのみでの就活は難しいです。
大切なのは、その仕事でどんな「スキル」を身につけてきたかをアピールすること
- データ分析: 顧客のニーズを読み解く力
- プロジェクトマネジメント: チームを動かし、目標を達成する力
- コンサルティング: 相手の課題を聞き、解決策を提案する力
例えば上記のようなスキルをアピールしていけば、製薬業界だけでなく、IT業界や医療機器メーカーでも通用する、あなたの強力な武器になりえます。
戦略2:「学び直し」にどんどん投資する 🎓
もし早期退職制度があなたの目の前に現れたら、それを「新しい自分になるチャンス」と捉え、
思い切って「学び直し(リスキリング)」に挑戦するのも手かもしれません。
具体的には、以下のようなキャリアパスが考えられます。
- データサイエンスやエンジニアのスキルを身につける:
製薬業界で扱ってきた膨大なデータは、データサイエンティストやエンジニアとして新たな価値を生み出す源泉になります。
AIを活用した創薬研究や、患者データを解析して治療法を改善する研究など、最先端の分野で活躍する道も開かれます。
- 専門性を活かした研究職への転身:
薬品開発の知識は、バイオテクノロジー、再生医療、遺伝子治療といった類似の研究分野でも応用可能です。
これまでの経験を活かし、流行の分野で研究を続ける道も考えられます。
- デジタルヘルスや医療ITの知識を深める:
医薬品情報や患者のデータを管理するシステムは、今後の医療を支える基盤です。
この分野の知識を身につければ、製薬業界の経験を活かし、ヘルステック企業で新サービスの開発に貢献することも考えられます。
戦略3:「なぜ、この仕事をしているのか?」を問い直す 🤔
時代が大きく変わるときは、自分の「軸」を見つめ直す絶好のチャンスです。
あなたはなぜ、この業界で働いているのでしょうか? この問いへの答えが明確になれば、どんな変化の波が来ても、あなたのキャリアはブレません。
まとめ:変化を「チャンス」に変える
製薬業界の変革は、不安な側面もあるかもしれません。
でも、それは同時に、私たち一人ひとりのキャリアを、もっと自由に、もっと豊かにするチャンスでもあります。
会社の看板に頼る時代は終わり、自分自身の「スキル」と「想い」を武器に、どこでも活躍できる力が問われています。
この新しい時代を、あなたの未来を切り拓く、ポジティブな力に変えていきましょう。
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